ヤキイモとヒラマキイモの違い

先日の石垣島旅行で明らかにヒラマキイモではないけど似ているなーというイモガイを拾い、近海産図鑑や大先輩のブログの写真を眺め回してようやくヤキイモで確定できたので、メモがてら紹介です。

 

 

ヤキイモは図鑑やブログの説明を見ても正直これといった特徴が無く、存在は知っていても同定ができない状態でした。どこの説明も要領を得ないんですよね・・・書くことが無いのかネーミングの面白さに重点がいっていたり。肝心の同定ポイントが書かれていないんですよ。体層に似たような茶色い模様をもつイモガイでパッと思いつくのはヒラマキイモですが、こちらは数が多い上に模様のバリエーションが豊富でどこからどこまでが変異で類似の別種との違いが何なのかはやはり要領を得ません。沖縄のイモガイ入門種と言えるくらいたくさん拾えるのに。あと地味に検索汚染が酷くてgoogle先生の回答が役に立たない

ヒラマキイモ

ヒラマキイモはたくさん拾える

そんなわけで、これはもうたくさん拾っていって疑わしいものをピックアップするしかなかろうということで地道にヒラマキイモを拾い続けて実に6年が経過したのでした。そんなに拾えないもんですかね?笑 まあ特に初期はタカラガイに主眼を置いていたために他の貝の同定はかなり疎かだったので、致し方なかったかもしれません。

これだけ長期間にわたって拾い続けていればAIじゃないですが流石に模様のバリエーションを含めたクセもインプットされてきて、決め手に欠けるのは変わらずともこれはヤキイモではなかろうか?という個体の識別が少しずつできるようになってきました。なんというか・・・体層の模様がやや淡いのがヤキイモで、色が濃いめのがヒラマキイモではないだろうか、的な。あとはブログを渡り歩いて写真を眺めていて殻口の開き方もちょっと違うのではないかなどと思ってみたりしましたが、こちらは確証が持てませんでした。

ヤキイモ

ついに拾えた

そして来る2022年10月12日。新婚旅行の合間に捩じ込んだ貝拾いで、ついに明らかな違和感を感じる個体と遭遇。ヒラマキイモは模様の出方や濃淡に差があれど基本体層の色は茶色と白の2色のみなのですが、この個体は明らかに暗緑色というか、別の色が入っています。ヒラマキイモの変異と片付けることはできませんでした。

ヤキイモ

この日は同様の個体を2個拾った

ぶっちゃけブログの記事では見切り発車でヤキイモと同定して記載してしまいました。なのでこの時点では根拠は前述の違和感のみ笑

この後手元の2個を眺めたり図鑑やブログを眺めたりとさらに10ヶ月が経過。今になってようやく明らかに異なるポイントを識別できたので、同様に同定に困っている方向けにメモを残すことにしました。

ヒラマキイモとヤキイモの横並び比較
左: ヒラマキイモ 右: ヤキイモ
殻底付近の拡大
殻底付近の拡大

ヒラマキイモとヤキイモの横並び比較。たったこれだけの比較写真を載せてくれているとこが見当たらなかったので・・・皆さん周知の事実だったのかな?ともかく、明瞭な違いは殻底の色です。ヒラマキイモは褐色〜紫褐色に彩色されるのですが、ヤキイモでは白色となります。そういえばあちらこちらのブログに掲載されているヤキイモの殻底も白色だったな・・・分かりやすい違いあるじゃん・・・。
また、ヒラマキイモでは体層下部に顆粒が出ます。摩耗すると目立たなくなってしまいますが、ヤキイモには無い特徴なので、新鮮な個体なら同定の役に立つかもしれません。

ヒラマキイモとヤキイモの殻頂

殻頂も色が違う

殻頂もヒラマキイモでは白色か淡い褐色なのに対し、ヤキイモでは淡紅色に彩色されるようです。また、ヒラマキイモでは螺塔の斑紋は焦茶色、ヤキイモでは体層以外の層部分の斑紋が暗緑色?を帯びています。

ヒラマキイモ、ヤキイモ

混ぜてみた

その他、近海産図鑑によれば体層に桃色、橙色、灰青色、褐色、黒褐色の斑、点、螺帯、螺点列が入るなどバリエーション豊富なようです。今回の個体ではそこまでいろんな色は入っていませんが、慣れてくるとぱっと見でヒラマキイモには無い色使いだけでも識別できそうです。また、ヒラマキイモの模様は横方向なのに対し、ヤキイモの模様は縦方向という違いもありそうです。説明しづらいですが・・・アンボンクロザメに対するクロフモドキの模様の方向性の違いに似ている気がします。

真面目に観察していくとこれだけの相違点を挙げることができましたが、冒頭でも書いたように、ヤキイモの説明は図鑑もブログも個性が無い上に類似種との比較がほとんど載っていないために苦労させられました。さらにいえばヒラマキイモは行けば必ず拾えるくらい多いですが、ヤキイモは2個だけ・・・もしかしてかなり少ないのでしょうか。石垣島の電信屋跡ではすぐに2個拾えたので、場所によっては多産するタイプかもしれませんね。

お手元のヒラマキイモ軍団、今一度見直してみてはいかがでしょうか。

コメントを書く