【海で見かける】イボニシ【食べられる貝】

アッキガイ科から食べられる貝の紹介です。

 

 

分類: 新腹足目アッキガイ科レイシガイ属

和名: イボニシ(疣螺)

学名: Thais clavigera (Kuester, 1860)

分布: 北海道南部・日本海男鹿半島以南

生息環境: 潮間帯岩礁域のかなり上部、引き潮で干上がる場所くらいまで

 

採れたてのイボニシ
採れたてのイボニシ
サイズ色々
サイズ色々

地元周辺の磯遊びでよく見かけるアッキガイ科の貝は本稿のイボニシと、レイシガイ、場所によってはイソバショウといったところでしょうか。これが南紀まで行くとセンジュモドキとかガンゼキボラとかいっろいろ増えるんですが。
肉食で、他の貝を襲って殻に穴を開けて食べるようです。中身を掃除してくれる反面こいつらのせいで穴あきになってしまうので、タカラガイ採集家にとってはどちらかといえば厄介者か。

イボニシ背面

イボニシ背面

その名の通り全体にイボが出ます。上下のイボの間には白い線が2, 3本入ります。よく観察してみると、この白い線は螺溝に対応しているようです。

イボニシ背面比較

イボニシ背面比較

白い線は小型の個体では目立たなかったり、大型の個体でも次体層より上では不鮮明だったりしますが、だいたい殻口〜殻底付近では確認できると思います。

イボニシ殻口比較

イボニシ殻口比較

殻口外唇内側の縁が黒くなります・・・が、たまに右の個体のように白っぽくなるものもいるようです。内唇側は成長具合で滑層の厚さが変わるのか若干変異がありますが、薄い黄色〜オレンジ色のことが多いです。似ているレイシガイは殻口全体がオレンジ色になり、また全体にサイズが大きいことで区別ができます。

イボニシの蓋

イボニシの蓋

蓋です。前回紹介したエビスガイはニシキウズガイ科なので革質多旋型でしたが、イボニシはアッキガイ科によく見られる革質で半月型の蓋を持ちます。蓋の成長の起点となる部分を核と呼び、通常は蓋の中心からそう外れない位置にあるものですが、アッキガイ科では核が蓋の外唇側に偏在するようです。成長の線から形状を類推すると核は蓋の外側にあるんじゃないかって感じの形をしてますが・・・いや違うな、外唇側の端(写真左端)にあるこの細長い部分が核で、そこから螺旋状ではなく同心円状に成長していくようです。あとどうでもいいですが蓋の上下の一部分だけ色が違うの何でしょうね。

イボニシの軟体部

イボニシの軟体部

軟体は全体に黄褐色です。もしかしたら雌雄で色が違うのかな・・・?この辺は解剖やる人なら基礎知識かもですが・・・。なんだか巻貝の軟体取り出しが下手くそなことで定評があると思ってましたが、イボニシに関してはものすごく取り出しやすかったです。
ちなみに鰓下腺という部位から捕食用の神経毒を分泌するのですが、これが貝紫という染料の原料になるそうです。現代でも博物館の体験でやれないことはないみたいなので、一度試してみたいですね。軟体をどれだけ集めれば布一枚染色できるのでしょうか・・・。

採取方法
潮間帯のかなり上の方にいるので、水につからずとも容易に採取できます。というかいるとこにはうじゃうじゃいますね。ただ大きくて食べでのある個体はそこまで多くないかもしれません。

身の取り出し方: 煮沸。
大きさにかかわらず普通に塩茹でにして簡単に取り出せます。メジャーな磯つぶはやっぱり取り出しやすいものが多いのでしょうね。他の貝だともう論文あたって肉抜きに最適な加熱時間やら調べる必要があるので、可愛いもんです。
ところでアッキガイの仲間は内臓が辛いものが多いようで、イボニシも内臓に辛味があり人を選ぶようです。大根の辛い部分のような・・・一般的に辛くないと思いがちな食材で辛味を感じると河原に悪いのではなどと本能的に思ってしまいますが、こいつに関しては一応許容範囲内ではあります。個体差はあるようで、今回食べた4個体は特に辛味もなくとても美味しかったです。産地によるのかな。今までアッキガイ科はこの辛味のイメージから勝手に苦手意識を持っていましたが(外れのクモガイなんかぶっちゃけ酷い味だったし)、この程度なら積極的に狙っていきたいと思いました。
レイシガイはもっと辛いらしいのですが、どうなんでしょう。ぜひ採取して試したいところです。

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